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推しのぬいを取る内加虐心が育った

推しのぬいはデザインがヤバくない限り大体かわいい。綿と布で出来ている癖に段々本物の推しのように錯覚してくる。

先日ゲーセンに並び始めたObey Me!のぬいぐるみ。
ベルゼブブぬいは何故か口が半開きだった。多分腹が減っているんだろう。仕方のないやつだ。かわいい。
絶対ほしかったのでUFOキャッチャーの先達に教えを乞うて金を持ち(アームは課金すると強くなるらしい。課金しても手に入らないガチャより優しい)ゲーセンへ向かった。
デッケー呪術や鬼滅やツイステのぬいぐるみの中、おべみのぬい達はアスファルトに咲く花のような静けさでそこにいた。可憐だ……。
キラキラじゃりじゃりの透明小石どもの中にぽつんと一人、ベルゼブブ。可憐だ……。
手が震えていたので両替機で財布を開いた瞬間小銭をばらまいた。レーシングゲームをしていた子どもが咄嗟に拾おうとしてくれていた。いいやつだ……。

金を入れた瞬間きゅるきゅるの声が煽りだす。
「おねが~~~い><」じゃねえ。願うな。掴み取れ。
「もう終わっちゃうのぉ…?(*´;ェ;`*)」終わらねえ。黙って見守れ。
数百円入れた程度ではクレーンの力は強まらない。こちらも数百円でどうにかなると思っていないので無言で100円を投入しつつひたすらベルゼブブぬいを持ち上げては落とし続けた。

ウォンウォンウォンウォンウォン……ぺちゃ

        ああ……顔面から小石に……

ウォンウォンウォンウォンウォン……ぺちゃ

        結構高いところから……

ウォンウォンウォンウォンウォン……ぺちゃ

        ウワッ……頭から落ちた……


人間同じような様子を何度も見ていると、それに楽しみを見出だそうとする。
例に漏れずヘカチャンもぺちゃ……ぺちゃ……と無慈悲に地面へ落とされるベルゼブブぬいに奇妙な興奮を覚えていた。

ベルゼブブは悪魔七人兄弟の中では六男という立ち位置だが、戦闘における力は強く、長男ルシファーにも頼りにされていたらしい。
体格も良かった彼は、本来ならばこんなちゃちいUFOキャッチャーに弄ばれる男ではなかったのだ。
なのにどうだ。ぬいとして哀れにも二頭身かつふんわりボディになってしまったが故に、ぺちゃぺちゃぺちゃぺちゃ小石に身体を打ち付けている。
ごめん……ごめんな……痛いよな……
はやく助けてやらなきゃという気持ちともうちょっとこの可愛い状態を維持したいという気持ちが拮抗しつつ、100円を入れる手は加速していく。
そして……

ガチャン
「おめでとぉ~(*ゝω・*)やったネ(≧∇≦)b」

ウワッ……!!!!!!!!!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
↑こんな気持ちも落とした頃には無くなっており、ただ当たり前に自分の元へ帰ってきたベルゼブブについていた埃を払ってやりリュックにしまいこんだ。気分はラオウ

帰りに100均があったのでチラ見していると、犬用のサンタ服を発見。
わー、これベルゼブブに丁度いいな……いや犬用だしな……
……
……このベルゼブブ、めちゃくちゃ首輪似合うな…………


いやいや……

はは……


(脳裏に浮かぶぺちゃ……)


……


カワイイナッ……!